|
|||||||||
|
|
城崎温泉の歴史秘話
| 温泉地の歴史秘話をご紹介します。あなたの情報もゆこゆこネットで掲載いたしますので、ぜひご投稿ください。 |
「逃げの小五郎」が潜伏した温泉街と旅館
|
街で最も古い外湯【鴻の湯】が発見されたのが飛鳥時代だったというから、およそ1400年もの歴史を持つ城崎温泉。その温泉街の西側、外湯のひとつ【御所の湯】の向かいに「維新史跡・木戸松菊公遺蹟」と刻まれた1本の碑が立っている。“木戸松菊”とは桂小五郎の変名である。ここが幕末に桂小五郎が身を隠していた宿『松本屋』で、現在は『つたや』と名を変えて営業を続けている。 元治元年(1864)7月、京都で蛤御門の変が勃発。長州藩は幕府側の連合軍(薩摩藩、会津藩、桑名藩)や新選組などと戦い、敗れて京都から追われる。これにより長州の重要人物である桂小五郎もまた、お尋ね者の身となった。その後、小五郎は対馬藩邸出入りの商人・広戸甚助の手引きで京を脱出、但馬の出石(兵庫県)へと落ち延び、甚助の身内の家などに匿われた。しかし、幕吏の追手が出石にまで伸びてきたため何度か潜伏場所を変える。そのひとつが城崎温泉だった。大勢の湯治客の中に紛れ込めるので安全と考えたのであろう。小五郎はその年の9月に城崎を訪れ、広戸甚助の顔がきく『つたや』に逗留した。ここには当時“たき”という一人娘がおり、桂の境遇を憐れんで親身に世話をしたという。 小五郎は温泉に入って心身を休めたが、当時の城崎には各旅館に内湯はなく、【御所の湯】【まんだら湯】【一の湯】3つの外湯があるに過ぎなかった。城崎最古の源泉地【鴻の湯】は当時浴場としては使用されていなかったというから、小五郎が入ったのも3つのうちのどれかである。ちなみに、現在は全部で7つの外湯があるが、温泉街全体で源泉を集中管理し供給しているため、泉質はすべて同じものだ。 10月、小五郎は一旦出石に戻り、荒物商(雑貨屋)になりすまして再起の時を待ったという。明けて慶応元年(1965)3月、出石で愛人幾松(後の松子夫人)と落ち合った小五郎は、幾松と従者を連れて再び城崎を訪れた。泊まったのはやはり『つたや』で、1ヶ月ほど滞在したのちに大坂へ出て海路長州へ戻った。その後、小五郎は薩摩の西郷隆盛と薩長同盟を結び倒幕へと奔走する。一人娘“たき”は小五郎の身のまわりの世話をしているうちに身重となったが、流産したという。その心境はいかばかりであったろうか。 小五郎が滞在した部屋には「朝霧の 晴れ間はさらに 富士の山」と墨で落書きされた板戸が残されていたが、大正14年の北但大震災で温泉街もろとも焼失してしまった。現在、館内に展示されている掛け軸や書状は広戸氏の関係者等から譲り受けたものという。建物は震災で焼けた後の昭和初期に再建されたものだが、小五郎が使った2階の部屋は「桂の間」として再現されている。昭和41年春、司馬遼太郎が『竜馬がゆく』の取材と執筆のために訪れ、この部屋に泊まっている。 城崎の街の一角には、幕末の混乱期に「逃げの小五郎」と呼ばれた男の素顔の面影が微かに残されている。(文・写真/上野哲弥) 【人物紹介】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……・・・ ■≪桂小五郎(かつら こごろう)≫ [1833〜1877年] 明治初期の政治家で、維新三傑の一人。1833年萩に生まれ、吉田松陰の門下生となった。長州藩若手のリーダー格で、池田屋事件、蛤御門の変ではうまく難を逃れ「逃げの小五郎」と呼ばれた。のち土佐の坂本竜馬の仲介で薩摩藩と薩長同盟を成立させ、倒幕を実現。木戸孝允と改名し、明治新政府に参加した。 ■≪西郷隆盛(さいごうたかもり)≫ [1827〜1877年] 維新三傑の一人。薩摩の下級藩士の子であったが、藩主の島津斉彬に抜擢され側近として活躍。禁門の変、第1次長州征伐では幕府側に立ったが、薩長同盟の後は倒幕派として戊辰戦争で戦功をあげる。江戸城攻撃の際は旧幕府軍の勝海舟と会談し、無血開城に導いた。明治6年、征韓論に敗れ下野。西南戦争を起こし城山で自刃した。 |
|
| 温泉地の歴史秘話をご紹介します。あなたの情報もゆこゆこネットで掲載いたしますので、ぜひご投稿ください。 |
その他の歴史秘話
文学の香り漂う温泉街で歴史ある外湯をめぐる
「手拭をさげて外湯に行く朝の 旅の心と駒下駄の音」。与謝野鉄幹が詠んだ情景は、今も城崎の地に息づく。小さな古い旅館が建ち並び、下駄と浴衣姿で7つある共同浴場を巡る人たちが行き交う。町の中央を流れる大谿川に沿って柳と桜の並木。玄武岩を重ね合わせた階段状の太鼓橋が風情を一層高める。古くから多くの文人墨客に愛され、志賀直哉が療養中に執筆した「城の崎にて」は有名。日本海の味覚も楽しみの1つで、毎年冬には「カニ王国」が開国されカニ一色に染まる。温泉街にはカニみそソフトクリームやカニビールといった珍しい味覚も。文学の香り漂う昔ながらの温泉街と、湯めぐりにカニ三昧。贅沢な時間が待っている。
●住所:豊岡市城崎町湯島 ●立ち寄り共同浴場数:7件