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城崎の未来を創る3人のキーパーソン鼎談

城崎の未来を創る3人のキーパーソン鼎談

浴衣でそぞろ歩き、外湯めぐり、文豪たちの軌跡……。挙げだすとキリがないほど、城崎は魅力が詰まった街。この歴史ある土地は、今後どんな風に進化していくのでしょうか。その答えを知るため、城崎に深く関わり、数々の仕掛けをつくってきた御三方に集まっていただきました。城崎の街が持つ力の源から、未来へ向けた活動まで。3人のキーパーソンが語ります。

まずはキーパーソン3人のご紹介

今回、城崎のキーパーソンとして集まっていただいたのが、こちらの3人。左から、城崎生まれ代表として160年の歴史を持つ老舗旅館「西村屋」の7代目・西村総一郎さん。20年以上前に城崎に移住してきた“外から来た”先駆者の「山本屋」の代表・高宮浩之さん。そして「城崎国際アートセンター」の館長を勤めながら城崎をはじめ豊岡市のPRに関わる田口幹也さんです。

ちなみに、今回の会を取り仕切ってくれたのが田口さん。ひうらさとるさんの取材でお会いしたのがきっかけです。今回は、西村さん・高宮さんを招集していただきました。

「僕はもともと東京に住んでいて、飲食店の経営やメディアの立ち上げなどに関わってきました。東日本大震災を機に移住を決意し、まずは実家のある豊岡市の神鍋(かんなべ)高原に住み始めたんです。そうしたら、東京から友達が大勢やってきて、豊岡市の城下町とか城崎温泉をよく案内していたんですよ。で、豊岡市のポテンシャルの高さに気付いたんです。

せっかくなら、もっと色んな人にその素晴らしさを届けたいなと思い立ち、勝手に“おせっかい”という肩書きを名乗って、PRのお手伝いを始めました。副市長に会いに行き、豊岡の良さを引き出してくれるクリエイターとのコラボを提案したりして。そんな活動を続けていくなかでお2人とは出会ったんです」(田口さん)

「(西村)総一郎さんとは、共通の知人との食事の席ではじめて会いました。そのあと『本と温泉』プロジェクトの相談が来たんです。実は、彼のお父さんと僕の父が仲良くさせてもらっていて、そういう経緯もあって“よそ者”だったけど信頼してもらえたんだと思います。初顔合わせの時は、『あやしい帽子の人いるな』と思っていたらしいので(笑)。

僕が彼をキーパーソンとして選んだ理由は、街の若きリーダーというのもあるんですが、広い視点で城崎のことを考えているからです。47都道府県の旅館が参加する、国内最大の宿泊産業ネットワーク「全旅連」(全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会)の青年部・部長も務めていただけあって、街全体をどうしていくかを常に考えているんですよ」(田口さん)

「高宮さんとは、今は辞めてしまった市の職員の方に『田口さんに合わせたい人がいる』と言われ、紹介してもらいました。高宮さんは僕より20年以上も前に城崎に移住してきた大先輩。

しかも『日本一ゆかたの似合うまち』として城崎でゆかたフェスを企画したり、城崎発の地ビールを作ったり、『Visit Kinosaki』というインバウンド向けWebサイトをローンチさせたり……。僕よりも先に城崎を盛り上げようとしてきた、まさにキーパーソン。何か始めるときに色々と相談できる人でもあり、後ろ盾にもなってくれる人ですね」(田口さん)

城崎は“感覚の若い”人が多い街

――お集まり頂き、ありがとうございます! 城崎の未来について話してもらう前に、まずは街の魅力について語ってもらえればと思います。

西村さん(以下、敬称略):私は城崎で生まれ育った人間なので、改めておふたりに聞いてみたいですね。

高宮さん(以下、敬称略):田口さんから見てどんな部分が居心地良いですか?

田口さん(以下、敬称略):僕は「城崎国際アートセンター」の館長を勤めはじめた2015年に城崎に引っ越してきたんですけど、歩いて暮らせる街ですし、その前に住んでいた地元の神鍋高原よりも住みやすいなって思っています(笑)。

城崎って、年間数十万人が宿泊しに来ていて、そのうち数万人が外国人っていう、人の流れが多い街。だから、風通しの悪さがないんですよね。話題が滞留しないというか。人の噂は75日というけど、城崎は75日も持たない。

西村:外湯とスナックで話が広がるけど、確かにあまり話は長引かないですよね。

高宮:それすごく分かります。多分、いちばん大きいのはみんなが商売しているからだと思うんです。お客さんも都会からくるし、感覚がいわゆる田舎とは違う。みんな気持ちも格好も若い。あと新しいものが好き。

田口:以前「ピエール・エルメ」のポップアップショップを城崎でやったんですけど、びっくりしたのが、若い子が多いと思ったら、いちばん多くきたのは城崎在住の年配の方。2回きた人もいました。いくつになっても新しいものに貪欲な印象ですね。

街全体で城崎を良くしようという意識がある

高宮:日本で初めてとか、新しいもの好きなイメージ。よそがやってないことをやりたい土壌がある気がします。ゆかたのファッションショーだって、外湯めぐりの文化が根付いているとはとはいえ、なかなか普通の街じゃできないことですよ。

田口:あと移住者に対しても優しい人が多いですよね。高宮さんが来られた時もそうでした?

高宮:うん、上の人たちにすごく良くしてもらいましたね。居心地の悪さみたいなものは感じたことないですね。だから嫁いだとはいえ20年もこの街にいられる気がする。

――つまり、そういう人々の若々しさや優しさが街の魅力だと?

高宮:街全体をひとつの旅館として考えられているのも大きいと思います。「駅が玄関、道路が廊下、外湯が大浴場、宿が客室、土産物屋が売店、飲食店が食堂」と言われているんですけど、ほかの温泉地と違って、旅館だけに滞在するスタイルじゃないんですよ。だから、街全体で城崎を良くしようと考えている気がする。

田口:「本と温泉」も、自分たちだけよければ良いっていう考えじゃ決してできなかったですからね。そういう街全体で良くしようという考えや新しいもの好きの感性がうまく融合することで、何度訪れても観光客の方が楽しめる文化ができている気がします。

――そんな話を聞いていると、城崎の街はなんだか安泰ですね。高宮さんや田口さんのような、新しい仕掛けをしていく移住者の方も多いですし。

西村:でも人口がどんどん減り続けているんですよ。2040年を過ぎると今のままでいくと人口が6万人くらいまで減るんです。今が約8〜9万人。しかも現役で働ける人の数が、ざっくり半分くらいになります。高齢者の数は今と変わらずに……。つまり現役の人と高齢者の比率が約1対1になるのが見えていて……。

――そうなんですね……。

西村:となった時にどうしたらいいかというと、やっぱり、今よりもっと観光客を増やすしかないんですよ。そうすれば移住してくる人や街に戻ってくる人も増えるかもしれない。

田口:実際に城崎はUターンしてくる人も多いですしね。

車をなくしてもっと歩きやすい街にしたい

西村:私としては、当面の目標は10〜20万人、観光客を増やす必要があると思っています。NHKの朝ドラの舞台とかになれば瞬間的には増えるかもしれませんが、いちばん大切なのは今の魅力をもっと際立たせること。

――魅力を際立たせるとは具体的にはどういうことですか?

西村:高宮さんも田口さんも言っていましたが、やっぱり城崎の魅力のひとつが浴衣で街をそぞろ歩きする文化だと思うんです。そこで2つのことを推進したいと思っています。まずは近郊で建設予定のトンネルをなんとか通したくて(笑)。

――トンネルですか!?

西村:はい(笑)。暗礁にのりあげていたトンネル工事を、行政の人たちになんとか進めてもらえるよう交渉しています。トンネルが開通すれば交通の流れも変わるので、物流など色々と便利になるはずなんです。それがうまくいったら、もうひとつのやりたいことを進めます。街から車をなくしたいんです。

田口:街の道路が廊下ですもんね。廊下なのに車多いなって(笑)。

――トンネルは通すけど、街からは車をなくすんですね。

西村:トンネルができると観光客の方も城崎に来やすくなるんですよ。でも、街は文化的にも車がない方が絶対に映えるし、浴衣で歩きやすいはず。私の構想としては、自動運転のバスが周遊するみたいな風にしようかなと考えています。観光客や地元民の車を駐める場所が必要になるから、大きな駐車場を街の玄関口に設けたいなと。

高宮:ちなみにトンネルはうまくいけばいつ頃できる予定?

西村:2027年を今は目標にしていますね。

田口:公共事業にも入り込めるのが総一郎さんのすごいとこですよね(笑)。

――それは全旅連に参加されていたからですか?

西村:それもありますが、街を良くするために、自治体などの方たちと積極的に交流させてもらっているのが大きいですね。

――でも車がなくなったら、よりそぞろ歩きするのが楽しめますし、話題性も高くてメディアにも多く取り上げられそうですね!

日本初の演劇と観光を学ぶ大学ができる

――ほかにも何か未来へ向けた取り組みはありますか?

高宮:豊岡市に大学もできるよね?

田口:専門職大学ですよね。そうなんです、2021年にできます。しかも学長候補が、アートセンターでも色々と関わっていただいている、劇作家の平田オリザさんなんです。平田オリザさんは、城崎国際アートセンターの発足の際にも尽力してくれただけでなく、現在豊岡市が小・中学校に取り入れている演劇の授業も推進した人。2019年には、自身の劇団「青年団」を引き連れ豊岡市へ引っ越しされる予定です。

そんな彼が学長の日本初の演劇をベースとして観光を学べる公立大学ができたら、また人の流れが変わると思っています。豊岡市に若い人が増えることで、城崎にも若い人が流れてくるはず。アートセンターも色々と関わっていく予定ですし。

高宮:城崎ってUターンしてくる人は多いけど、大学生くらいの年齢の子たちはどうしても外に出ちゃうから、嬉しい話ですね。

田口:城崎ってアーティストにとってすごく良い環境なんですよ。東京だと帰宅時、都会の雑踏のなかでテンションが下がるそうなんです。でもここは街がひとつの旅館で、街全体が風情もあるし、温泉も近くにあるし、創作のモチベーションが途切れづらい。専門職大学で来た若い子たちが城崎の魅力を知ったら、どんどん発信してくれるんじゃないかなと思っています。

高宮:そうなると街の人たちも更に張り切りそうですね。2021年……インバウンドも順調に増えてるし、10万〜20万も夢じゃないかもね。

西村:旅館数も足りなくなるかもしれないんで、そういうところも今後考えなきゃいけないですよね……。私はとりあえずトンネルを通して車をなくさないと。

田口:街の人たちの熱量があるからきっと大丈夫ですよ。僕も、もっと色々な仕掛け考えなきゃなと思ってまいす!

演劇と観光が学べる大学ができ、いずれは車が走らない街へと進化していく……。それを支えるのが、若々しい感性をもった優しい人々。たくさんの人が訪れることで、さらに新しくなっていく城崎の街に僕らも期待しましょう!

【撮影協力】

西村屋ホテル 招月庭 http://www.nishimuraya.ne.jp/shogetsu/

城崎国際アートセンター http://kiac.jp/

城崎 山本屋 https://www.kinosaki.com/

Photo/井垣真紀(イガキフォトスタジオ)

「街の魅力がすべて詰まった8本の記事で作った城崎特集」はこちら

YUKOTABI 編集部
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