「ふぅ~」
平日の朝、家族全員を送り出した斎藤美子(52)は、ソファーに座ると一息ついた。
結婚20年を迎え、子育ても峠を過ぎた。
少し前までは反抗期でけんかばかりしていた息子も、今では気遣いを見せてくれるほど。
そんなとき目に入った、「昔憧れていた芸能人がガンで闘病中」というテレビのニュース。
50代の自分はもちろん、いまは元気な両親だって、いつ急に動けなくなるのか分からないのだ。
「お母さん、元気かな?」
子育てが終わる前に、私も母にもう1度親孝行してみよう。
そんな美子の思いつきとともに、母娘2人、「現代湯治体験」の旅がいま始まる。
ある日、ふと思い立った
「母と一緒に旅に出よう」

私の母は定年まで会社を勤めあげ、自分の年金をもらう悠々自適の老後を送っています。膝や腰など痛いところはあるというけれど、入院するほどの大病はまだ患っていないのが幸いです。
家族全員を送り出したとある平日の朝、ソファーに座ってテレビを見ていると、昔憧れていた芸能人がガンで闘病中だというニュースが流れていました。
ふと考えてしまったのは、自分も含め母だっていつ急に動けなくなるかわからないということ。
そこで「元気なうちに旅に出よう」と思うようになったのです。さっそく母に「今度のお誕生日に、温泉でも行かない?」と声をかけると、二つ返事でOKとのこと。父も誘ってみたけどひとこと「俺はいいや」というので、母娘水いらずのふたり旅を計画しました。
旅行先はどこがいい?
私が「これだけは譲れない」と掲げた条件

私から「温泉でも行こう」と誘ったものの、どうしても行きたい場所があったわけではありませんでした。さらに日程も「誕生日の前後で」と思っていたくらいで、特にこだわりはなし。それなら、お盆や土日などの繁忙期を避けて、平日に出かけようということにしました。
そして宿を探す際に最も重視したのは「母が無理なくくつろげるところ」というポイント。70歳を超える年齢の母と、娘の私自身も50代ということで、ふたりで元気に楽しい時間を共有できれば理想的です。さらにサブ条件として、観光やグルメも楽しめればいうことなし!
…そんなイメージで、旅行先と宿泊宿を探すことにしました。
ここならゆっくり過ごせそう現代湯治の「斎藤ホテル」

本やネットでいろいろ調べていくうちに、気になる言葉に遭遇しました。それは「現代湯治」というキーワード。従来からの湯治といえば自炊で何か月も長期滞在し、病気治療を行う…そんなイメージでしたが「現代湯治」はもっとカジュアルな印象です。
例えば、宿に数日間滞在して、温泉や観光をゆっくり満喫。そうすることで身も心も癒される…
そんな新しい湯治のスタイルが、母との旅行にぴったりじゃないかと思ったのです。
そこで「現代湯治」をキーワードとして検索をし直してみると、長野県・鹿教湯(かけゆ)温泉の「斎藤ホテル」を発見。詳しく調べてみると、鹿教湯温泉は江戸元禄時代から1200年も続く名湯であること、ホテル館内にはトレーニングジムや温泉を利用した室内温泉プールがあり、専属トレーナーも常駐していると知りました。
同ホテルでは上高地・軽井沢などの名所をめぐるホテル発着のバスツアーもあるとか。ホテルのエントランスから発着するツアーなので、効率的に観光できそうです。
気になる口コミを見ると、1泊や2泊で訪れた人が「もっと長く滞在すればよかった…」と残念がる投稿が多かったため、今回は思い切って平日3泊4日の予約を入れてみました。
いよいよ実際にホテルへ
評判以上の快適さに「もっとのんびりしたい」という気持ちに
東京駅から新幹線「はくたか」に乗って約1時間半。あっという間に長野県の上田駅に到着です。
上田駅から出ている無料の送迎バスに乗り込むと、豊かな森に抱かれて建つ、12階建ての近代的なホテルに到着しました。

館内には充実した施設がずらりと勢ぞろい。温泉は大浴場と露天風呂、貸切風呂があり、清掃時間を除くほぼ24時間いつでも入浴OKです。
温泉の後に近くを散策してみると、マイナスイオンたっぷりの大自然が広がっています。

食事は信州の豊かな自然を一望するレストランにて。夕食・朝食ともに和・洋・中の品数豊富なビュッフェで、どれにしようか迷ってしまうほどでした。「現代湯治」で連泊する人への配慮から、40種類以上のメニューは日替わりで多種多様。
いろいろ目移りしてつい食べすぎてしまいますが、健康に配慮した調理法なのか胃もたれもせず、どれもおいしくいただけました。

ホテルエントランスから発着する
「斎藤駕籠屋」を体験
翌朝、朝食をいただいた後ライブラリー(図書室)に立ち寄ってみました。長野県の歴史や自然にまつわる本も数多くそろうので、土地のことを調べたり、行ってみたい場所を探したり。自身で観光に出かけるのも良いですが、斎藤ホテルでは「斎藤駕籠屋(さいとうかごや)」の名のもとに、ホテル発着の日帰りバスツアーを開催しているとのこと。

催行日によっては「いちご狩り」や、駒ヶ岳ロープウェイから冬景色を楽しむなど、季節限定のツアーもあるようでした。エントランスからバスで観光に連れて行ってもらい、そのまま帰って来られるという手軽さが人気なのだそうです。
訪れた日の「斎藤駕籠屋」は、長野県松本平広域公園ほかで行われていた「信州花フェスタ2019」(こちらのイベントは2019年6月16日に閉幕済)を訪れるというもの。行ってみたい気持ちはあるものの、広大な園内を歩いて周れる自信がないと母が躊躇していると、WHILLという「次世代型電動車いす」の貸し出しを行っていると背中を押してもらい、今回は思い切ってWHILLを持参して参加することを決めました。

会場を自分の足で散策するのもよいですが、リゾート地などによくある「セグウェイ」に近い印象なので遠出した時に歩き疲れたらサッと出してきて使うような、WHILLは気軽でスマートな乗り物でした。おかげで、国内最大級の花と緑の祭典という「信州花フェスタ2019」を余すことなく満喫することができたと、とても喜んでいました。
自然に目が覚めるまでゆったりと、朝食も好きなものをチョイス
3日目はあえて予定を入れず、のんびり過ごすことにしました。目覚ましをかけずに自然と目が覚めるまで眠り、それから朝食会場へ。朝食ビュッフェも豊富な品数がそろうので、体調や気分にぴったり合うものを選べるのが嬉しい限りです。

「今日はジムにいってみない?」と食事中に言い出したのは母でした。これまで定期的な運動をしてきたわけではない人が、自然と運動してみたくなる…そんな気持ちになれるのも現代湯治のいいところです。トレーニングジムや温泉を利用した室内温泉プールに、気軽に通えるのも嬉しいポイントですね。毎日開催・無料のストレッチ教室では、経験豊富な専属トレーナーがしっかりレクチャーしてくれました。
うちの母は普段あまり運動するタイプではのですが教室に参加した後は「身体がすごくスッキリする!これなら自宅に帰ってからもひとりでできそう」と喜んでいました。少し身体を動かしたら、また温泉でリラックス。温泉の泉質は湯あたりしにくい弱アルカリ性単純温泉なので、繰り返し何度も楽しめます。
「もう少し長くいたかった」
名残惜しさとともにチェックアウト

チェックアウト後は、斎藤ホテルの社長がプロデュースする「さいとう菓子工房」へ。ホテルからは徒歩約3分と、ほど近い場所にあります。

イチオシは信州産のりんごを使った「アップルパイ(390円)」。地元で採れたりんごの風味をしっかりといかすため、あえてシナモンなど香りの強い材料を使わず作られているそうです。また食感を重視し、パイ生地は256層になるよう畳むというこだわりも。実際に食べてみると素朴な味わいで、手間暇かけて丁寧に作られたことが伝わるおいしさでした。お土産に人気というのも頷けます。私たちも、父へのお土産にアップルパイを買って帰ることにしました。
盛りだくさんの「現代湯治」
ゆったり3泊でも物足りないかも

身体を動かしたり、温泉を楽しんだり、明るく元気になれる施設とサービスがそろう斎藤ホテルの「現代湯治」。実は長期滞在のゲストが多いので、ゲスト同士で仲良くなる人も多いのだそうです。斎藤ホテルの「現代湯治」は、おいしい食事で身体の中から元気になれるのはもちろんのこと、運動や観光までさまざまなことを気軽に体験できるのが人気で、2度、3度と訪れるリピーターも多いとか。
そのため宿泊者同士のコミュニティが生まれ「ではまた3か月後のこのイベントで会いましょうね」というように、再会を約束して家路につく人もいるそうです。そんな魅力的な斎藤ホテルの「現代湯治」。訪れる前は「3泊4日の滞在では長いかな」と思っていたのがうそのように、あっという間に過ぎた4日間でした。母も体調に合わせて無理なく過ごせましたし、娘である私自身もおいしい料理や観光をしっかり楽しめたという、とても有意義な旅となりました。
「まだもう少し滞在したい」そんな物足りなさを抱きつつ宿を後にしたので、次回はトレーニングジムやプールの有料プログラムなどにも挑戦してみたいと思っています。
斎藤ホテルで体験する「現代湯治」は、期待以上に心地よく、親しみやすいものでした。ここで過ごす毎日は、どんなシーンにおいても選択肢が豊富。温泉、観光、運動、食事…いつでも好みに応じて「自分らしく」選べるうえ、全てのことに気負いなく、手軽に実現できるのが魅力です。
母のとっても嬉しそうな様子を見ていたら、今度は家族でも来てみたいな...なんて。
帰る瞬間からまた訪れたくなるような、そんなお気に入りの場所ができました。


