重要なお知らせ
【連載】ダムは招くよ「第2回 ダムのかたち色々」

【連載】ダムは招くよ「第2回 ダムのかたち色々」

こんにちは、ダムマニア&ダムライターの宮島咲です。

前回の記事で、日本にはダムが約2,700基もあり、最古のものは616年に造られたとお話ししました(ダムは「基」と数えます)。

今回は、これだけ国内に存在しているダムを、ちょっとだけ細かく分類するお話をしたいと思います。

ダムの聖地、みなかみ町

群馬県みなかみ町。ここは、ダム愛好家からダムの聖地と呼ばれている場所です。

利根川の最上流であり、町内に7基ものダムがあるからです。

みなかみ町周辺の簡略図

利根川は、群馬県みなかみ町にある大水上山(おおみなかみやま)を水源とし、埼玉県、茨城県、千葉県を通って太平洋にそそぐ関東平野の大河川です。

全長は322Kmもあり、全長367Kmの信濃川に次ぐ2番目の長さとなっています。

利根川

利根川の水は、利根川本流が通っていない東京都にも水路などで運ばれ、首都圏の重要な水源となっています。関東地方が水不足になった時、テレビのニュースにたびたび登場するダムは、みなかみ町にあるダムであることが多いです。

重力式コンクリートの藤原ダム

関越自動車道水上インターチェンジを降り、みなかみ温泉街を抜けると、もうここはダムの聖地です。利根川をさかのぼり山に向かって車を走らせると、1基目のダム「藤原ダム」が見えてきます。

藤原ダム

藤原ダム

藤原ダムはコンクリート製のダムで、直線的な造りをしています。高さ95m、長さ230mの、どちらかというと大ぶりのダムです。ちなみに、高さのことを専門用語で「堤高(ていこう)」、長さのことを「堤頂長(ていちょうちょう)」と言います。ダムに行ったら、これらの専門用語を使ってみるといいかもしれませんね。

藤原ダムの様な、直線的なコンクリート製ダムのことを「重力式コンクリートダム」といいます。これはダムの型式(けいしき)を表す言葉で、この他にも数種類の型式があります。この後、他の型式のダムも出てきますので、絶対に覚えておいてくださいね。

国内のダムの約4割は、この重力式コンクリートダムです。多分、多くの人が想像するダムの形はこの型式でしょう。この型式を想像されなかったかたは、きっと、この後に登場するアーチ式コンクリートという型式を想像したのだろうと思います。

藤原ダムを眺め終えた後は、ダム管理所に行ってみましょう。ダム管理所では、ダムカードというものがもらえます。全国のダム約700基で配布されているトレーディングカード型のミニパンフレットです。このカードは、現地に行かなければもらえない貴重なものなのです。

ダムカード

ダムカード

ロックフィルの奈良俣ダム

藤原ダムから、さらに利根川をさかのぼりながら車を走らせます。だんだんと山深くなり、道も右左にクネクネしてきます。そして、見通しが悪い右カーブを抜けると、目の前に巨大な岩の山があらわれます。そう、これが「奈良俣ダム」なのです。

奈良俣ダム

奈良俣ダム

堤高158m、堤頂長520m、堤体積は1310万立方メートルで、堤高は国内第4位、堤体積は国内第3位の巨大ダムです。

ダムはコンクリートでできていると思われがちですが、この様に岩を積み上げて造られたダムもあります。この型式を「ロックフィルダム」といいます。

この型式のダムは、国内のダムの約1割しかなく希少な部類に属しますが、近年造られるダムはこの型式が多いため、数字以上に多く感じます。

アーチ式コンクリートの矢木沢ダム

奈良俣ダムをあとにし、利根川の最上流へと目指します。矢木沢ダム管理用道路を8Kmほど走ると「矢木沢ダム」へ到着です。でも、このダムの特徴はダム本体ではなく、ダムの手前にある減勢工(げんせいこう)なのです。

矢木沢ダムのスキージャンプ台

矢木沢ダムのスキージャンプ台(通常時)

これは、ダムから放流をおこなう時に使用する水路です。スキージャンプ式減勢工といい、ここから放たれた水が空中を舞うことによって水の勢いを弱めます。下流の河川の護岸が水に浸食されてしまうことを防ぐための工夫です。

矢木沢ダムのスキージャンプ式減勢工

矢木沢ダムのスキージャンプ式減勢工(放流時)

普段は写真の様な放流をおこなうことはありません。とても強い台風が直撃した時にあるかないかというレベルです。

しかし、年に一度だけ誰でも見るチャンスがあります。毎年5月に点検放流がおこなわれており、その日程が事前に発表されているのです。昨年はこの放流を見るために2100人もの人が押し寄せました。かなり迫力のある放流なので、ぜひ、時間を作ってでも見に行っていただきたいイベントです。

矢木沢ダム

矢木沢ダム

スキージャンプ式減勢工を通り過ぎるとすぐに、矢木沢ダムに到着します。このダムが利根川最上流のダムです。首都圏を洪水から守り、水道水を貯め込んでくれている非常に重要なダムなのです。

このダムの型式は弓なりになった形が特徴の「アーチ式コンクリートダム」。ダムにかかる水圧を左右の山に逃し、水を堰き止める構造です。

この型式のダムは国内に52基しかありません。この数は、国内のダムの2%にも満たない数字です。しかしながら、ダムといえばこの型式を思い浮かべる人もいらっしゃるかと思います。その理由は、日本で一番有名なダムである、富山県の黒部ダムがこの型式だからではないでしょうか。

ということで、ダムの3つの型式を覚えていただけたでしょうか。みなかみ町は3種類の型式のダムがある非常に珍しい場所なのです。ダムの聖地と言われる理由にもご納得いただけたかと思います。

さて、関東の最北地まできたら、当然温泉に入りたいですよね。みなかみ町には18ヶ所もの温泉があります。日帰り温泉もよし、温泉旅館に1泊してもよし。個人的には、1泊することをおすすめします。その理由は、残り4基のみなかみ町のダムを翌日に見ていただきたいからです!

●水上周辺の宿情報はこちら

2018年の点検放流を見たい方にお知らせ

2018年5月12〜13日のみなかみ町の奥利根地域にある3つのダム(藤原・矢木沢・奈良俣ダム)の点検放流をターゲットとした宿泊プランが、ホテルサンバードより発表されています。私も3つのダムの勉強会などに講師として参加いたしますので、ご興味のある方はぜひどうぞ!

ホームページ

(2018年3月8日公開)

宮島 咲
1972年、東京都生まれ。日本ダム協会認定元ダムマイスター、東京・本所吾妻橋の老舗割烹料理店「割烹三州家」5代目兼ダム事業部長。 脱サラした28歳頃からダムめぐりを始め、関東地方を中心に700基ほどのダムを訪問、国内のダム約2700基の制覇を生涯の目標としている。2002年開設したウェブサイト「ダムマニア」でダム関係者に注目され、ダム工学会や日本ダム協会主催の講演などのほかテレビやラジオにも多数出演。 著作に「ダムマニア(オーム社)」や「ダムカード大全集(スモール出版)」などがある。本業の料理店でも各型式のダムを模したダムカレーを提供。群馬県みなかみ町や、愛知県豊根村の町おこしにダムカレーが導入されるなど、 さまざまな角度からダムや水源地をプロモーションする事業を展開し、ダムへの理解促進とダムファンの拡大に日々尽力している。 ●「ダムマニア」http://dammania.net/

関連する記事