【連載】ご当地グルメ、忘れえぬ味「第2回 福島・金山町の天然炭酸の水」

天然炭酸の水

取材で全国あちこちにお邪魔していますが、残念ながらほとんどが“一回こっきり”。いいな、プライベートでまた来たいな、と思っても、新しい旅をこなすのに精一杯で、なかなか再訪を果たすことができません。

よく周りから、「あちこち行けていいね」といわれますが、旅は行きたい時に行きたい場所へ行くのが一番だと思います(食も、食べたい時に食べたいものを食べるのが一番美味しい!)。さて、そう考えると、本プライベートの旅は、一体いつ以来だろう……。

それでも、縁があって2度、3度訪れる場所もあります。

例えば京都。これは、京都大学のウェブサイトの仕事で、年に数回、大学の先生にインタビューしに行っているから。仕事が終わった後の夜の飲み歩き、食べ歩きが何よりの楽しみです。最初は京都らしいおばんざいの店などを巡っていましたが、近ごろは路地裏を当てもなく歩き、良さそうな居酒屋に飛び込んだりしています。最近のヒットは四条河原町の裏の小さなホルモン焼肉屋。店は古くて煤だらけなのですが、肉は新鮮そのもの。だからいまの僕にとって、京都といえば“焼肉”のイメージなのです。

福島県奥会津の金山町(かねやままち)も、そんな“ご縁ある”場所です。

初めて訪れたのは2015年の11月。町主催のマスコミ向けプレスツアーにお招きいただきました。

東京からだと車で5時間。電車だと新幹線で郡山まで行き、そこから磐越西線で会津若松へ。日本屈指の人気ローカル鉄道・只見線に乗り継ぎ、会津川口まで約2時間と、やっぱり5時間くらいかかります。

なので、最初の印象は、とにかく“遠い!”でした。会津のさらに奥(だから奥会津と言うのですね)、ほとんど新潟県との県境ですからね。

金山町

自然あふれる金山町

その分、自然は豊かでした。特に印象的だったのがブナの森。ブナは保水力が抜群に高く、冬に降った雪を水として蓄えてくれるそう。それが地下水となって、土地を隅々まで潤してくれるというわけです。

そして、その時初めて出会ったのが「天然の炭酸水」です。金山町には、日本では珍しいことに、自然に湧き出る炭酸水の井戸があるのです。

この炭酸水は、明治時代から県内外で評判になり、明治10年には「太陽水」というネーミングで販売。明治38年には「芸者印タンサン・ミネラル・ウォーター」という名で欧州諸国にも輸出されたそうです。

ところが山奥からの輸送は思いのほかコストがかかり、やがて出荷停止に。いつしかその存在すら忘れ去られ、“幻の天然水”となっていたのですが、平成16年に取水工場が設立されたことで復活。平均硬度45という軟水のまろやかさ、そして微炭酸の優しい口当たりが評判となり、現在は東京の一流料理店でも使われているそうです(ちなみに、2016年の伊勢志摩サミットでは、各国首脳をもてなす卓上水として採用)。

そんな由緒ある天然炭酸水が湧く場所に連れて行ってもらいました。

炭酸場

炭酸の井戸がある場所、その名も「炭酸場」

その名も「炭酸場」。山の麓のだだっ広い空き地の片隅に、小さな木の櫓が立っていました。その中に天然炭酸水の井戸はあったのですが、夏と秋は水枯れの時期ということで、井戸の中はスッカラカン。残念!

仕方なく、併設する工場でボトリングした天然炭酸水をお土産にもらい、その夜、宿でハイボールにして飲んでみました。すると……美味しい! 一瞬“ダシでも入ってるのか?”と思ったほどです(そんなわけはないのですが笑)。

天然炭酸水のハイボール

天然炭酸水で作ったハイボールは、まさに極上の一杯

軟水のまろやかさと繊細な微炭酸の口当たりがそう錯覚させたのでしょうか。あるいは、何らかの物理的作用がウィスキーの味を引き立てたのかもしれません。もちろん科学的な裏付けはありませんが。

ただ、確かなのは、僕がこれまで飲んだハイボールの中でも、1、2を争う美味しさだということ。だからこそ、いまも“舌の記憶”に残っているのです。

さて、それから2年余りたった、今年2018年の1月末。再び金山町にお邪魔しました。

今度は雪積もる冬。折しも東京で4年ぶりの大雪が降った日でしたが、金山町は逆に例年より雪が少ないとのこと。地元の方は、「(豪雪を期待して来たのに)雪が少なくてスミマセンね」と嬉しそうに笑っていましたが、その気持ち、僕も雪国・新潟出身なのでよ〜くわかります。それでも60㎝は雪が積もり、累計降雪量は4m30cm。やっぱり日本有数の豪雪地帯です。

今回は、「新潟・福島豪雨災害」(2011年7月)のため長く運休していた只見線の会津川口駅〜只見駅間の復旧が決まり、心機一転頑張ろうと意気込む金山町の姿を見て欲しいと、再び町からお招きいただきました。同じ場所にプレツアーで呼んでもらうのは珍しく、それだけでも縁を感じてしまいます。

只見線

町を横断する只見線。不通区間は2021年度に完全復旧予定。

もちろん、2年前に訪れた天然炭酸水の井戸にも足を運びました。

炭酸場の周辺

2年ぶりの再会!

炭酸場は、深い雪で覆われていました。以前は枯れていた井戸を覗いてみると、なんということでしょう!(某リフォーム番組風にお読みください)、こんこんと水が湧いているではありませんか。

溢れんばかりの天然炭酸水

井戸から溢れんばかりの天然炭酸水。コップも置いてあった

近くに寄って耳をすますと、ピチピチと炭酸が弾ける音がします。

井戸に置かれていたコップで汲んで飲んでみると、シュワシュワとした爽快感が口の中に広がります。冷鉱水特有の金気臭さは気にならず、炭酸も強くないのでゴクゴクと飲めました。そして、何の引っかかりもなく、スッと体の中に染み込んでいくのです。

汲みたての炭酸水

汲みたてのフレッシュな炭酸水をいただく

井戸水や岩清水はこれまでに何度も飲んだことがありますが、湧きたての天然炭酸水を飲んだのは生まれて初めて。ただの水でも美味しいのに、さらに炭酸というおまけまでついて……まさに大自然の“ご褒美”!

そんな天然炭酸水が湧く金山町には、実は炭酸の温泉もあるんです。

金山町は、「滝沢温泉」「大塩温泉」「湯倉温泉」「中川温泉」「八町(はちまち)温泉」「玉梨温泉」「大黒湯」と7つも源泉がある温泉天国。

そのうち炭酸ガス(二酸化炭素)を豊富に含む、いわゆる“炭酸泉”は、「大塩温泉」「八町(はちまち)温泉」「大黒湯」の3つ。中でもプチプチの“泡”をしっかりと感じられるのは、「恵比寿屋旅館」と町営共同浴場の「せせらぎ荘」です。

「恵比寿屋旅館」は日本秘湯を守る会の会員宿で、玉梨温泉と八町温泉の2本の源泉を引いています。

炭酸を多く含むのは八町温泉の方。実は、2015年の豪雨災害(只見線運休のそれとは別)の影響で湧出量が減ってしまったのですが、少し離れた場所で再掘削し、2017年に復活しました。

月の形をした窓が印象的な半露天の貸切風呂。

恵比寿屋旅館の貸切露天風呂

情緒たっぷりの貸切露天風呂(恵比寿屋旅館)

無加温・無加水の源泉掛け流しの湯船に身を横たえると、みるみるうちに体に泡がついていきます。

炭酸泉に浸かる

体の表面に無数の泡が!

湯の温度は38度と、一般的な炭酸泉より高め(温度が高いと炭酸ガスが抜けてしまう)ですが、冬に入るにはちょっとぬるめ。それでも、炭酸ガスには血管を拡張し、血行を促進させる効果があるので、じっとしていると体がポカポカと温まってきます。こうなると、もう湯船から出たくありません。のんびり長湯を楽しみたい人には最高です。

ちなみに、恵比寿屋旅館は、最初に訪れたとき、天然炭酸水ハイボールを飲ませてくれた宿でもあります。会津郷土料理をアレンジした料理も素晴らしいので、金山町で泊まる際はぜひ!

「せせらぎ湯」は、2016年9月にリニューアルオープンした町営共同浴場。かつては玉梨温泉だけを引いていましたが、リニューアルにあたり、長年使っていなかった大黒湯の源泉を調べてみたところ、抜群の炭酸泉だということがわかり、2つを別々の浴槽に引いて、両方楽しめるようにしました。

せせらぎ荘の町営共同浴場

川ぞいにある町営共同浴場(せせらぎ荘)

大黒湯は、源泉1kg中に含まれる二酸化炭素量が1,000mg以上と、金山町の炭酸泉の中で最も多い炭酸ガス量を誇ります。しかも、湯口からかけ流すのではなく、空気に触れないよう湯船の中から湯を注ぎ入れているので新鮮そのもの。注ぎ口の近くでじっとしていると、全身を泡が包む感覚が味わえます。ビールも炭酸泉も“注ぎ方”が大事、というわけですね。

せせらぎ荘の2つの源泉

大黒湯、玉梨温泉、2つの源泉が楽しめる(せせらぎ荘)

大黒湯は冬でも40度近い

大黒湯の湯温は冬でも40度近く!

汲みたての天然炭酸水を飲み、注ぎたての天然炭酸泉につかる。
文字通り体の内と外から、天然の“泡”に癒されることができるのです。

「天然炭酸の水」公式サイト
ホームページ

恵比寿屋旅館
所在地 福島県大沼郡金山町玉梨横井戸2786-1
交通アクセス JR会津川口駅よりバス約10分 玉梨八町温泉下車徒歩約1分 磐越自動車道会津坂下ICより車で約50分
ホームページ

せせらぎ荘
所在地 福島県大沼郡金山町大字玉梨字新板 2049-1
交通アクセス JR会津川口駅よりバス約10分 玉梨八町温泉下車徒歩約2分 磐越自動車道会津坂下ICより車で約50分
ホームページ

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東京在住のライター・構成作家。食・酒・旅を主なテーマに、「日刊ゲンダイ」「おとなの週末」などの雑誌、テレビ、ウェブで活躍中。日本旅のペンクラブ理事。 (プロフィール写真:kurekaoru)

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